私が棄てた女
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自動車の部品会社に勤める吉岡努は、清水専務の姪マリ子との結婚に思い悩んでいた。それは田舎出で苦労してきた彼にとって将来の出世を約束される道であったが、かつては学生運動に青春の火をたぎらせた自分が、いまは刹那的な快楽と利益を追うホワイトカラー族の一人になっている…。ある夜、努は下宿仲間と飲み、クラブの女を抱いた。その女から彼はミツの噂を聞いて愕然とした。ミツは努が学生時代に遊び相手として見つけた田舎出の女工だった。愛情もなく、肉体だけのつながり、将来への希望は何もない。努はミツの身体を楽しむだけ楽しんだ上、海岸におきざりにして逃げ、下宿も変えてしまった。ミツがその後、努の子供を中絶したことなど知る由もなかった。