安楽椅子探偵と笛吹家の一族
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2003年6月。大学生の真中有人は偶然、中学生時代の同級生の相楽美音と再会した。美音は実は笛吹興産社長・笛吹音右衛門が妾に産ませた子であり、母親の死後に笛吹家に引き取られたのだという。
ここ数年の笛吹家は立て続けに不幸に見舞われており、かつて音右衛門に借金をした末に破産して自殺した音楽家・琴村弦三が「笛吹家を呪う」と言い残していたという。その呪いのためか、当主の音右衛門が一ヶ月前に海難事故で死亡していた。
有人は、岡山の別荘で遺産相続の話し合いが行なわれると聞き、美音のナイト役になろうと考え、その話し合いに参加すると申し出る。別荘は死んだ琴村のかつての家だった。この家の周りでは、全身を包帯に包んだ「謎の包帯男」に何度も襲われており、家人たちは面白半分に『琴村の幽霊』ではないかと噂していた。
やがて弁護士が遺言を公開するが、音右衛門の遺産は僅か400万円しか残っておらず、株の大半は副社長の鐘田に相続されることになった。しかも相続税が払えないのでこの屋敷は壊し、土地を売却するしかない状況であった。美音たちの兄姉は悔しがるが事実上打つ手が無かった。美音は何とかしようと、かつて音右衛門が話していた笛を探し回る。
翌日、鐘田が納戸のトランクの中で死体となって発見された。美音は犯行現場のコントラバスケースの中に、探していた笛を見つける。
警察が捜査すると、家にいた全員にアリバイが無かった。笛吹律が養っている芸術家・響木弾は、美音が琴村の弟子だったことを調べ上げ、お前が犯人なのは黙ってやるから体を差し出せと襲い掛かってくる。美音は必死で、「困ったときに吹くと一度だけ助けてくれる笛」を吹き鳴らすのであった。